(第3回)Oracle Cloud データウェアハウス(DWH) 市場動向調査

(第3回)Oracle Cloud データウェアハウス(DWH) 市場動向調査

目次

はじめに
パブリッククラウド業界に欠かせないサービス「DWH」
クラウドでDWHを利用するメリット
クラウドDWHの市場動向

はじめに

Autonomous Data Warehouse Cloud(ADWC)の調査を進めながら本カテゴリのブログを書き始めましたが、
オラクルとしてもADWCを彼らのクラウドサービスの旗頭的な形でプッシュしているようです。
今回はその背景について考察してみます。

パブリッククラウド業界に欠かせないサービス「DWH」

パブリッククラウドでのデータウェアハウス(DWH)の動向をよく調べてみると、AWSも今年5月に「Amazon Analytics (Redshift) 事例祭り」というイベントを開催しており、Googleも「BigQuery」の活用事例セミナーをこの10月に開催しており、各社DWHサービスをプッシュしてきています。

つまり、パブリッククラウド業界において、次のターゲットはDWHでの利用が増大するとみなしていることがわかります。

考えてみると、確かにその通りなのかもしれません。
DWHは20年位前から企業の戦略的IT活用として、その重要性は知られてきていますし、大手企業では流通などでのトレンド分析や、生産予測など広く活用されています。

でも、なぜ今クラウドでDWHなのでしょうか。

クラウドでDWHを利用するメリット

実は、クラウドでDWHを行う事は非常に大きなメリットがあります。
オンプレミスでのDWHの課題から考えてみると

  1. データの反映に時間がかかる
  2. データ量に制約がある(速度的、絶対量的)
  3. データベースエンジニアとしての特別なスキルが必要
  4. 処理能力やデータのエンドポイントなどの柔軟性に乏しいこと、データが増えるとコストがかさむこと

などの課題がある

つまり、ハード要件に制約があり、活用すればするほど急速にハード資源が不足し、都度増強しなければならないなど、予算化、費用対効果の計算が立ちにくいといえます。
その為、なかなか気軽に新たなデータ分析を始めることが困難になってきます。
また、重大なデータの可用性、信頼性を高めようとすると、ハードコストだけでなく、膨大な人的処理が発生し、対応不能となってしまうという事も多いでしょう。

これをクラウド環境で考えると、最小コストから始め必要に応じインフラを順次増強できる事、高可用性を簡単に構築できる事だけでも大きなメリットであり、それゆえ結果を得られる確信が無くてもまず始めることが出来るだけでも強力なメリットと言えそうです。

クラウドDWHの市場動向


少し古い資料ですが、IT調査・ コンサルティングの企業であるITRが2月9日に発表した国内データウェアハウス(DWH)用データベース管理システム(DBMS)市場調査によると、2015年度の売上金額は前年度比35.0%増の約40億円となっています。2016年度も同26.8%増と引き続き伸びを予想しています。

ITRは、同市場の順調な成長について、AWSを利用するユーザーの増加に加え、後発のGoogleが著しい伸びを示していることを主要因として挙げています。IoTの導入の高まりなど、データ活用環境の強化に対する投資が着実に増加していることも指摘されています。

以下のグラフはDWH単体ではなく、分析ツールなど周辺も加えたものですが、これでは2020年には3000億円市場になると予想されています。


国内ビッグデータ/アナリティクスソフトウェア市場予測、2016年~2021年(2016年は実績値、2017年以降は予測値) 出典: IDC Japan, 6/2017

これらを前提にして今回のオラクルの動向を改めて考えてみると、その目的がよくわかるのではないでしょうか。

オラクルのAutonomous Data Warehouse Cloud(ADWC)は上記のDWHのインフラにおけるクラウドの強みは当然のこととして、人的資源削減にアピールする製品としています。

DWHは基本的にその管理を人手に大きく依存するものです。
また、その取扱いは複雑でインフラスキル、DBスキル、分析スキルが求められ、結果として非常に高コストであり、その構築には時間がかかります。
特にこれからますますIT人材の不足が予想されており、その状況は2020年以降急激に悪化すると言われています。

Autonomousの売りはまさにここで、
自己管理(Self-managing)、自己保護(Self-securing)、自己修復(Self-repairing)
により、DWHの運用コストを大幅に軽減することにより、簡単にDWHによる分析を始めることが出来ますよ

という事なのです。

まさにデータベースの巨人の面目躍如といったところかもしれません。

クラウドでのDBMS市場をけん引しているAWSも当然自律性に関しての機能の充実をアピールしてきています。
オラクルとしてはここでは追い上げる立場(クラウドとして)、追い上げられる立場(DBの巨人として)であるといえます。

このブログでは、技術的な立場としてADWS実践調査結果を書いていくのと合わせ、クラウド各社の戦略と動向についてもいろいろ考えていきたいと思います。