パスワードはもう時代遅れ?いま注目の「パスキー」と多要素認証を初心者向けに解説

パスワードはもう時代遅れ?いま注目の「パスキー」と多要素認証を初心者向けに解説

日本人の84%がパスワードを使い回しているという調査結果が、2026年3月に発表されました。あなたも心当たりはありませんか?実は、パスワードという仕組み自体がすでに限界を迎えており、世界中で「パスワードをやめる」動きが加速しています。この記事では、なぜパスワードが危ないのか、そして次世代の認証方式「パスキー」とは何かを、わかりやすく解説します。

パスワードの何が問題なのか?

パスワードは1960年代に生まれた認証方式で、誕生から60年以上が経ちます。当時はインターネットも存在せず、管理するアカウントも数えるほどでした。しかし現代の私たちは、SNS・メール・ネットバンキング・ショッピングサイトなど、数十〜数百ものアカウントを持っています。

その結果、何が起きているでしょうか?「強いパスワードほど、覚えにくい」という根本的な矛盾に直面し、多くの人が「使い回し」「短くて弱いパスワード」「メモに書いて貼る」といった危険な運用に頼らざるを得ない状況になっています。

攻撃者側はパスワードへの攻撃手法を豊富に持っています。フィッシング(偽サイトへの誘導)、リスト型攻撃(流出したパスワードを別サービスで試す)、総当たり攻撃など、守る側が圧倒的に不利な状況です。Microsoftのレポートによると、パスワードだけを使うアカウントには1秒間に7,000件もの攻撃が行われています。

衝撃のデータ:日本の実態

2026年3月、トレンドマイクロが日本国内の1,034名を対象に実施した調査結果が公表されました。その数字は、日本のパスワード管理の実態を如実に示しています。

84%

パスワードを複数サービスで使い回している(日本・トレンドマイクロ調査)

91%

パスキーを「知っている」と回答しているが、実際の利用率は低い

94%

流出パスワード190億件超の分析で複数サービスに再利用されていた割合(Cybernews調査)

55社+

国内パスキー導入済み・導入予定企業数(2024年比で約2倍に増加)

「知っている」と「使っている」の間にある大きな溝が、いま日本の認証リスクの正体です。パスキーの認知率は9割を超えているにもかかわらず、実際の利用率はまだ低い状況です。

多要素認証(MFA)で防御を強化する

パスキーへ完全移行する前に、今すぐできる対策として「多要素認証(MFA:Multi-Factor Authentication)」があります。MFAとは、ログイン時に「知っていること(パスワード)」だけでなく、「持っているもの(スマホ)」や「自分自身の特徴(指紋・顔)」を組み合わせて認証する仕組みです。

MFAを設定するだけで、アカウント乗っ取りのリスクを大幅に減らすことができます。パスワードが漏洩しても、攻撃者がスマホを持っていなければログインできません。まだ設定していないサービスがあれば、今日中に設定することをおすすめします。

ただし、SMS認証(ショートメッセージ)は「SIMスワップ攻撃」という手口で突破される場合があります。より安全なのは、Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorのような認証アプリを使った方法です。

次世代認証「パスキー」とは?

パスキー(Passkeys)は、Apple・Google・Microsoftが共同で策定した、新しいパスワードレス認証の標準規格です。FIDOアライアンスという非営利団体が仕様を管理しており、すでにiOS・Android・Windows・主要ブラウザすべてが対応しています。

仕組みを簡単に説明すると、パスキーは「公開鍵暗号方式」を使います。ログイン時に必要な「秘密鍵」はあなたのデバイス(スマホやPC)の中にのみ保存され、外部のサーバーには絶対に送信されません。認証は指紋や顔認証などの生体情報で行います。

パスキーの最大のメリットは「フィッシング詐欺に効かない」という点です。偽サイトに誘導されても、パスキーはドメインを検証するため、正規サイト以外では動作しません。パスワードと違い、「入力してしまった」という事故自体が起きない仕組みです。

パスワード vs パスキー:何が違うか

パスワード認証

フィッシング耐性なし
使い回しリスク高い
サーバー側の漏洩リスクあり
覚える手間かかる
ログイン速度普通

国内の導入事例

パスキーはすでに私たちの身近なサービスで使われ始めています。NTTドコモは2023年にパスキー認証を導入し、フィッシング被害の報告がゼロになったと報告しています。また金融業界では、野村證券が2025年11月よりパスキー認証を原則必須化したほか、楽天証券・SBI証券もFIDO2対応のパスキーを導入しました。国内でパスキーを導入した企業数は2024年比で約2倍に増加しており、「パスキーへの移行」はいよいよ本格化しています。

今日からできること

  1. 重要なサービスにMFAを設定する メール・SNS・銀行・ECサイトなど、特に重要なサービスから多要素認証を設定しましょう。設定画面の「セキュリティ」や「ログイン方法」から有効化できます。
  2. パスワードマネージャーを導入する 使い回しをやめるために、パスワードマネージャー(1Password・Bitwarden等)の導入を検討しましょう。各サービスに異なる強力なパスワードを自動生成・管理してくれます。
  3. パスキーに対応しているサービスから試してみる Google・Microsoft・Appleアカウントはすでにパスキーに対応しています。設定画面から「パスキー」または「Passkey」を探して、まずひとつ試してみましょう。
  4. 古いパスワードが漏洩していないか確認する 流出チェックサービス「Have I Been Pwned(haveibeenpwned.com)」で、自分のメールアドレスが漏洩リストに含まれていないか確認できます。

参考資料

・ トレンドマイクロ「パスワード・パスキー利用実態調査2026」(2026年3月24日)

・ 日本経済新聞「パスキー国内導入が倍増 証券口座乗っ取りで注目」(2025年12月)― nikkei.com

・ FIDOアライアンス 公式サイト(パスキー) ― fidoalliance.org

・ IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」― ipa.go.jp

・ Qiita「パスキー認証の現在地 Microsoft Ignite 2025解説」― qiita.com